評価:
ジャン・ジャック・バルロワ
早川書房
(1987-11)
『幻の動物たち―未知動物学への招待〈上〉(下)』ジャン・ジャックバルモア著。
オウム事件以来あんまり、オカルト系のテレビ番組が放送されなくなりました。最近ちょっと復活してきたかな、という感じ。信じる信じないはともかくそういうお話は大好きだったりします。
で、『幻の動物たち―未知動物学への招待』は動物学者の著者が非常にまじめに未確認生物、UMA(ユーマ)について考察した本。ちょっと古い本なんだけど、この手の話が大好きな人はぜひとも読んでおきたい。っていうか、それなりに有名な本かもしれないので知っている人も多いかも。
動物「学者」なので、トンデモ系の怪しげな論旨の展開はなく、ごくごくまじめに書いている。個人的には未知の動物がいて欲しい。そのほうがおもしろい。
1987年に出ている古い本だという話は上にもちょっと書いたけど、古いだけあっって今ではいたずらと判明したような情報についても少し載っていたりするけど、それは仕方ないだろう。
あと、現代では否定されている間違った動物の生態についても少し書かれていたりする。
百獣の王ライオンがしとめた獲物を横取りするハイエナ…というステレオタイプは間違い。実際には、夜の間にハイエナがしとめた獲物を横取りするライオン…というケースのほうが多いらしい。最近ではライオンさんは百獣の王から卑しい横取り野郎に格下げされています。
なんでこういう間違ったイメージが広がったかというと、昔は夜間の動物観察ができなかったので、明るいときにライオンが食事して、その周りをハイエナが囲むという様子が見られたから。高感度カメラなどで夜間の動物観察ができるようになったら、なんとびっくり。ハイエナが狩った獲物をライオンが横取りしていたという…しかしながら、世間に広まったイメージというのはなかなか払拭しがたいもので今だにライオンは百獣の王、ハイエナは卑しい獣と思われているようです。
あと、オオカミに育てられた人間とかのことも書かれていましたが、現代ではそういうことはないだろうと。あったとしても、長期にわたり人間により監禁または軟禁されてた子供や知的障害のある子供がごくごく短期間の間だけ動物と暮らしただけなのではないかといわれています。
ところで、20世紀に認められた未確認生物としてオカピがあります。オカピは首の短いキリンという感じで、キリンの先祖とされる動物。現地の人は知っていたわけですが、西欧人にとっては20世紀にはいるまで幻の動物で、うっかり実在するんだと話そうものなら脳のかわいそうな人扱いされました。それはさておき、首が短いので不要なはずなのですが、キリンと同じように首の血管に逆流防止弁がついています。神の世界創造を信じるキリスト教徒からは、神がキリンの誕生をあらかじめ予定して、オカピをそのように作ったのだ。これこそが神の存在証明、とのこと。
が、私に言わせれば原因と結果が逆。突然変異か何かしらないけど、オカピに逆流防止弁ができた結果として、首を伸ばすことができキリンへと進化できた。キリンへと進化するために、逆流防止弁が備わったわけではない…と思うんですよね。
私の個人的意見とかいろいろと書きましたが、この手の話が好きな人には大変おもしろい本なので、読んでみてはいかがでしょうか。
ちなみに、最近、テレビでコモドオオトカゲ(コモドドラゴン)が世界最大のトカゲとかいわれているのを耳にしましたが、世界最大のトカゲはニューギニアオオトカゲだそうです。テレビっていい加減なもんですよ。